動画で伝える、器の背景 / 平戸松山窯 中里彰志さん
平戸松山窯に長男として生まれ、自然と焼き物の道に進んだという中里彰志(なかざとあきし)さん。制作に取り組む傍ら、地元の友人たちとYouTubeチャンネルを運営。三川内焼の歴史や器づくりの背景などをわかりやすく発信し、三川内焼の新たなファンを生み出しています。
3年前に佐世保にUターンした中里さん。それまでは東京の伝統工芸品を扱う会社で修業をしていたそうです。
「数十万円もする器をどんな方が買ってくれているのか。お客さまが三川内焼をはじめとする伝統工芸品のどこに魅力を感じているのか、どんな暮らしの中でどのように工芸品を楽しまれているのか。直接お会いして会話をさせていただくことで、そのあたりを肌感として理解できた気がします。」
「器づくりではお客さまの暮らしをイメージしながら、いかに感動を与えられるかを大切にしています。自分が作る器も量販店に並んでいる器も、機能面だけを見ればほぼ同じ器。そこにどんな価値を創り出せるか、自分にしかできないことは何なのか、試行錯誤を続けています」
ガスや電気の窯で焼くのが一般的な時代に、三川内では1年に2〜3回、復元された共同の"登り窯"を有志で焚いています。地域の作り手たちが一堂に会し、2日間にわたり夜を徹して薪をくべ続ける"窯焚き"は、中里さんにとって小さな頃から特別なイベント。作り手となった今は、普段の窯とは違う色や味わいを確かめる、貴重な実験の機会なんだそうです。
「窯出しの瞬間がすごく楽しみです。同じ白でもやわらかさが違いますし、登り窯で焼いた焼き物は木のテーブルによく馴染むと感じます。登り窯の窯焚きの様子もYouTubeで紹介しています。普段どんなことを考えて三川内焼を作っているのか、どんな工程を経て作られる器なのか、その実験の一部始終も見てもらっています。」
友人と共にYouTubeチャンネル「【ハクトウ】白の陶芸家〜平戸松山窯〜」を開設し、三川内焼の歴史をはじめ普段は見られない制作の過程などを紹介しています。
「御用窯だった歴史からか"閉鎖的"、"門外不出"といったイメージを持たれがちですが、三川内は実はオープンマインドの人が多いし、何も隠そうとしていないんです。ただよく伝わっていなかっただけ。後継者不足が深刻で、伝統をつなぐにはもっと三川内焼を知ってもらうことが重要だと考えてYouTubeを始めました。三川内焼の価値をわかりやすく伝えていきたいですし、動画をきっかけに1人でも多くの人に興味を持ってもらえれたらうれしいです」
と中里さん。これからの活躍に目が離せません!
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