人と人とをつなぐ人 / 嘉泉窯 金氏健多さん
人懐っこい笑顔とユーモアで、常に周囲を和ませるムードメーカーの金氏健多(かねうじけんた)さん。ふるさと三川内という産地をもっと多くの人に知ってほしいと、絵付け体験受け入れに取り組む金氏さんは、三川内焼のベテラン世代と若手世代をつなぐキーマンでもあります。
安土桃山時代に創業した嘉泉窯(かせんがま)の16代目となる金氏健多さん。400年以上のあまりにも長い伝統を前に、そのバトンの重さはいかばかりかと尋ねると意外な答えが返って来ました。
「プレッシャーは感じていません。産地で生まれ育った者にとって何代目、というのは案外普通のことで、ただ淡々とその事実を捉えています。次の世代につなぎたい気持ちはもちろんあるけれど、嫌々ながら受け継ぐバトンでは意味がないなとも考えています」。
「伝統を無視して好き勝手に作るというわけではないですが、伝統に傾倒しすぎないようにはしています。1番に考えるべきは器を使ってくれる人のこと。現代のライフスタイルの中で、どんなふうに器を楽しんでもらえるかを重視し、新しい感性を大切にものづくりをしたいですね。長い年月をかけて受け継がれた技術を守りながらも、自分が生み出すものはどれでも三川内焼だ、というくらいの自由さも、ときには大切にしたいです。」
伝統と現代の暮らしの間を見つめて、金氏さんが開発した商品の一つがロックグラスです。生地をギリギリまで薄く削る、薄胎(はくたい)という三川内焼伝統の高度な手仕事が、普段使いのグラスというアイテムに必然だったかのように馴染んで輝いています。
「後継者がおらず、私が小さい頃と比べても窯元の数はずいぶん減りました。若手といわれる世代は中里くんと私、そして移住者の林さんの3人だけです。移住して来てくれて本当に嬉しかったし、先輩たちがすぐに仲間として受け入れて、分け隔てなくかわいがってくれる姿を見て、三川内のよさを再確認できた気がします。3人展の予定もあり、今後も若手で力を合わせて三川内焼の認知度向上に貢献できればと思います。」
「そして三川内焼のこれからのため、1人でも多くの人に三川内焼を知ってもらいたいです。器はもちろん、三川内という場所を訪れてもらうのも一つの方法。観光地化されすぎてないありのままの姿だからこそ、味わい深い散策を楽しんでもらえると思います。」
そのきっかけになればと、嘉泉窯では絵付け体験も実施中。ぜひ健多さんを指名して(!)ユーモアあふれるお話しとともに、三川内の魅力に触れてみてください。
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