UMIKAZE Blog
海風旅ブログ
烏帽子岳登山口から隠居岳を越えて宇土越まで(させぼの歩き方:コース1)
ふるさとの山を歩くことから、エコツーリズムは始まる。
私たちは地元の自然をもっと知るべきではないだろうか。
国見山系から続く烏帽子岳や隠居岳。市街地に近い奨冠岳と弓張岳。
それらに車で上ることはあっても、学生の頃の遠足以来、あまり登っていないのでは。
改めて登ると、九重山や阿蘇にも劣らない登山道があるのを知る。
まず自分の足で登って、故郷の自然を再認識しよう。
深い森の山道を登っていく
市街地から登ることにすると、登山口は山祇町だ。「山手黒髪線」の新道で切断された、コンクリートの壁が登山口になっている。
その階段を上ると、霊園の上に沿った山道に出た。
自然林が昔のままにあって、なんだか懐かしい気分になる。小学校の頃に汗を流しながら登った記憶が蘇ってくる。砂岩がゴロゴロした急傾斜の道だ。
「このあたりは国見溶岩台地で、烏帽子岳は安山岩質。標高三百メートルぐらいまでは九十九島と同じ砂岩だよ」
楽山会の平田佳邦さんが説明してくれる。平田さんは日本百名山をほとんど登った山歩きのベテランだ。
東側から山頂に挑む。
杉の植林が伐採され、最近まで見えなかった相浦谷が一望できた。
杉を伐採して放置するだけだから、日本の植林事業は一体なんなのか、と考える。
烏帽子岳山頂は360度のパノラマだ。眼下には市街と佐世保湾が広がる。俵ヶ浦半島を越えて九十九島も見える。
山頂から下ると、「風と星の広場」と名付けられた草原で、周辺は西海国立公園となっている。
一画に「美しき天然」の碑がある。田中穂積がこの自然の美しさをテーマに作曲したという。
碑文の筆は作詞の武島羽衣によるもの。駐車場の隅には観測台があって、秋にはアカハラダカの渡りが見られる。
車の道ではなく、途中から自然林の中の小道を辿ることにした。
思いがけず静かな山の道だ。やがて親子堤に出た。
このあたりからは黒曜石の破片など縄文時代の遺物が出る。烏帽子岳の大地は、大昔は生活の場だったようだ。
途中に「百年の森」があった。
烏帽子分校跡の前を通って満場越から隠居岳へと向かう。
かつて牛がのんびりと姿を見せていた丘を登ると、やがて丸太作りの木場山展望台に着いた。
ここからは黒髪町や早岐方面が望める。
木場山の裾を通って隠居岳へと続く。アオモジやナンバンキブシの花房が春を告げている。
日ごろ見過ごしている花や木が、やけに気になる不思議。
そして最後の傾斜を登ると、隠居岳に着いた。
670mの緩やかな山頂だ。
三川内や波佐見方面が望め、峰の向こうには虚空蔵山がかすんで見えた。
自然林の、尾根沿いの柔らかな道を下る。
隠居岳から先は尾根伝いの下りとなる。
シイ、カシ、タブ、ツバキなどの照葉樹林を歩く。
新芽の木々の匂いが胸を満たし、トレッキングシューズの裏に湿った土の感触を覚える。
それだけなのになぜか楽しい。
山水の溜まりにサンショウウオの卵を発見した。みんな子どものように喜んでいる。
柔らかな疲労感に包まれるころ、宇土越の登山口に着いた。約四時間のコースだった。