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海風旅ブログ
日本遺産を感じる旅☆三川内皿山めぐり~まち歩き編~
※この記事は2017年5月時点の情報です。
佐世保の伝統工芸品「三川内焼(みかわちやき)」。愛らしい“唐子”(からこ)の絵柄でご存知の方も多いのではないでしょうか。美しい白磁に、藍色の染付が特徴の三川内焼。2016年には「日本磁器のふるさと 肥前~百花繚乱のやきもの散歩~」構成文化財の一つとして、日本遺産に認定されました。
その歴史は古く、今から400年以上前、豊臣秀吉が起こした朝鮮出兵の際、日本へ連れ帰られた陶工が、平戸で窯入れをしたのが始まりと言われています。その後は平戸藩の御用窯として栄え、19世紀、海外への輸出が始まると、その白磁の美しさ、技術力、繊細な染付などがヨーロッパで高く評価され、海外でも広く愛用されました。
「やきものの里」といわれる、佐世保市東部の三川内地区には、江永皿山、木原皿山、三川内皿山の3つの皿山があり、それぞれの地域でその巧みな技術が受け継がれ、現在も30以上の窯元が、400年の伝統を誇る「三川内焼」をつくり続けています。
今回は、3つの皿山のなかでも三川内焼の中心地といわれる、「三川内皿山のまち歩き」に出かけてきました。ガイドさんに案内していただきながら、風情ある街並みや史跡にふれたり、窯元を見学したり…、昼食には伝統の平戸寿司を作っていただきましたよ♪それでは、まち歩きレポートをお届けします。
スタートはココ↑観光案内所から。国道35号線から折れて、三川内山方面にまっすぐ進むと、この案内所にたどり着きます。向かいに「三川内山公園」という公園があるので、それを目印に進んできてくださいね。車はここの駐車場にお願いします。
三川内山の地図がありました。おぉ~見どころがたくさんありそうですね。
この地図からすると、坂道が多そうな予感…。よし、頑張るぞ!
①昭和初期まで使われていた窯の中に潜入!
まず最初に訪れたのは、「今由(いまよし)製陶所窯跡」。現在は使用されていませんが、昭和30年頃まではこの窯で陶磁器が焼かれていたそうです。長~い煙突がそのよすがを感じさせます。
ガイドの金氏さんに窯の中を見せていただきました(※ガイド立ち会い時のみ見学可)。アーチ型の入口から、おじゃましまーす。
わあー!思ったより広くて、天井も結構高い。石積みの壁面がなんとも趣きがありますね。所々に開いている小さな穴は、湿気とりの穴だそう。そして、中央にレンガを積み重ねたようなのが2塔、写っているのがわかりますか。あれ、一つひとつが箱のようになっていて、そのなかに器を入れて焼くのだそうです。(重箱のような感じ?)実際はこれがたくさん並んでいたんでしょうね。
焚き口は左右2穴ずつあります。昭和初期までは石炭で、それ以降はガスで火を入れていたそうです。焼きあがりまでにかかる時間はおよそ40時間、窯のなかは最高1,200~1,300℃に達していたとか!なんだか熱い気がしてきた…(気のせい)。
ガイドさんに促されて足元を見ると、無数の丸い穴がいっぱい!!
これは一体、何のための穴でしょう?
正解は…、通気口。上ではなく下にあるんですね。この穴から地下を通って、さっき見た高~い煙突へと抜けていくのです。ガイドの金氏さんいわく、この穴が詰まると、その上においた器は丸焦げになってしまうとのこと。よくできてるなぁ~。
以前はここに扉があったのかな。この入口で、窯の厚みがわかります。
現在は、ガス窯で15時間ほどで焼きあがるという三川内焼。使う材料や技法は同じでも、燃料や窯は確実に進化しています。
②焼物の里ならではの先人たちの知恵を知る
続いてガイドさんに案内されたのは…、あれ?道の途中で立ち止まりましたよ。
ここにはちょっと珍しい「塀」があるそうです。
それが、この「トンバイ塀」。石のような、瓦のような、不思議な色と凹凸ですね。
これらは、かつて登り窯の壁に使われていた耐火レンガなんです。それを、このあたりでは「トンバイ」と呼ぶのだそう。窯を取り壊した際に出る「トンバイ」が再利用されているのです。
役目を終えた窯が、見事にリサイクルされてます。熱かったね、お疲れ様~♡
そして、塀を見ながら歩いていると、ん?なんだか道がボコボコしている…。これは、かつて馬が通っていた「馬車道」。このあたりでは昭和30年頃まで、薪や陶土、できあがった焼物など重い荷物を、荷車を馬に引かせて運んでいたそうです。坂道に突起物があるのは、馬が踏ん張る際に、蹄が滑らないようにするため。これも先人の知恵です。
③平戸藩の御用窯として栄えた三川内焼の歴史スポット
続いて訪れたのは、「三川内皿山伝代官所跡」。主に献上品を検品した役所跡で、現在は建物の礎石のみが残っています。平成12~13年に行われた発掘調査では、献上品や輸出品に使われたであろう貴重な器が多く出土しました。お宝!かと思いきや、火割れや歪みがあったことから、検品した際の不良品だったと推測されているようです。
こちらは「陶祖神社」。平戸藩御用窯の棟梁を代々務めてきた今村家の先祖を祀る神社です。ここには、朝鮮から日本へ来た陶工、巨関(きょかん)の孫にあたる、今村弥次兵衛が祀られているそうです。ちなみに巨関の息子である今村三之丞は、佐世保の針尾島で網代(あじろ)陶石を発見し、初めて白磁の器を作った人なんですよ
昼食は、江戸時代の旅籠跡を改装した「泰平や」で平戸寿司御膳をいただきました♡
④三川内焼ゆかりの神社を目指して
昼食を済ませてから、次に訪れたのがこちら「釜山(かまやま)神社」。こちらも焼物の町らしいネーミングの神社です。
しかし、鳥居の先に神殿は見えず。長い、長~い石段がありますが、まさか…。
金氏さん「さあ、登るバイ!!」
私たち「あ、ハイ!!よ、よっしゃ、頑張って登ります!!」
「うっそ~、金氏さん早すぎ!」「私たちも負けていられないわ」
ふぅ、ふぅ…。ここまでで85段です。まだまだ先が長そう。
166、167、168…。はぁ~疲れた。ん?お墓?らしきものがあります。
ここは「高麗媼(こうらいばば)の墓」。高麗媼も朝鮮の陶工で、三川内の中里茂右衛門と結婚してこの地に移住し、三川内焼の礎を築いた方だそうです。享年106歳と聞いてビックリ!医学が進歩していなかった当時、106歳なんて…ギネス級!!
石段を179段登ったところには、石の太鼓橋がありました。釜山神社に向かう人が、神様を横切らないために築いたそうです。
この橋を渡ったら、もうすぐ神殿。では、渡りまーす♡
やっとたどり着きました。ここまで石段は何段あったでしょう?
正解は…、204段でした。よく頑張った、私たち。毎年10月下旬に行われるおくんちでは、この神社から神輿が出されるそうです。この急な石段を…すごい。
⑤三川内焼が作られている窯元を見学
三川内のまちを歩いていると、あちこちで「◯◯窯」の文字を目にします。たくさんの窯元が点在しているんですね。
というわけで、最後は実際に器を作っている窯元におじゃましました。
訪れたのは「平戸 嘉久正(かくしょう)窯」さん。
嘉久正窯さんの代表作「パンダのつなひき」を発見。二つの絵皿を合わせると、パンダが綱引きするんです。かわいい~♡
早速、作業をされている工房を見せていただきました。
わ~!肌色のいろんな器が並んでいます。これは本焼成前の“素焼き”の状態です。
こちらは、平戸 嘉久正窯8代目の里見寿隆さん。絵付をした素焼きの器に「釉薬(ゆうやく)」をかける作業を解説していただきました。
これ↑が釉薬。これを器の表面にコーティングすることによって、耐水性が増しツヤが出るのだそうです。写真の上の方に写っている絵皿を、これからこの中に入れていきます。
はい、これ↑が釉薬をかけた状態。絵柄が消えてしまった!と思ったら、焼いた時に美しい藍色になって出てくるそうです。簡単そうに見えて、実はこの作業、とても技術がいるのだとか。少しのムラも淀みもあってはいけませんからね。でもなんか気持ちよさそう♡
次は「絵付け」の現場を見せていただきました。三川内焼の柄は、すべて手描きってご存知でしたか。“一枚の絵画のようだ”と評されるほど、世界的にみても、三川内焼の絵付け技術は高いんですよ。
これが手描き!?間近で見せていただくと、もうこれは感動を通り越して、驚愕です!!とても人が描いたとは思えない正確さ…。匠の技、スゴすぎます。
最後にギャラリーも見せていただきました。お隣は寿隆さんのお父さんで、7代目の里見晴敏さん。三川内焼は「一子相伝」といわれ、親子代々でその技術を受け継がれているところが多いんですよ。
こちら↑は、平戸 嘉久正窯の代表的な絵柄「竹林」。これは、まさに絵画そのものですよね!おびただしい数の竹が力強く地面から生え、竹林がどこまでも広がっていくさまが緻密に描かれています。個人的には、竹が秘めた静かな生命力を感じたのですが…どうでしょう。
その他の作品も、ものすごく繊細な線で描かれていて、なかには4週間かけて描き上げた作品もあるとか。私たちも絵画を見るような感覚で、一つひとつじっくりと見せていただきました。まるで器の美術館のようでしたよ。
やきものの里、三川内まち歩きはいかがでしたか。
毎年ゴールデンウイーク5月1日~5日には、窯元主催の「はまぜん祭り」という陶器市が開かれ、多くの観光客で賑わいます。期間中はオークションやお楽しみ袋展示販売なども行われます。この機会にぜひお出かけくださいね。
■三川内まち歩き
集合・解散:三川内皿山公園
所要時間:約1時間30分~約2時間
定員:1~40名(最少催行1名)
料金:1人~10人 一律5,000円 1人増えるごとに+500円 団体割引なし。※最少催行人数 1人~
申込期日:~7日前まで
申込方法:三川内陶磁器工業協同組合へお電話にて
電話番号:0956-30-8311
HP:http://mikawachi-utsuwa.net/